奈良県で行方不明になっていた女子高校生が無事に保護されたニュース。まずは無事でよかったですね。
しかし、保護していることを通報した男性や、その高校生の実の姉が誘拐容疑で逮捕されたことが新たな関心を生んでいます。なぜ姉たちは逮捕されたのか?事件の背景と、経緯、そしてこれからどうなるのかを解説します。
事件の経緯

奈良県葛城市の病院から9日にいなくなり、行方不明になっていた同県内の高校1年の女子生徒(16)が16日、東大阪市内で保護され、県警は同日、女子生徒を車に乗せて連れ去ったとして生徒の姉を含む男女3人を未成年者誘拐容疑で逮捕しました。
逮捕までの流れは
1月16日の朝に一緒にいた知人男性から少女を保護していると連絡がある。
姉と知人女性、知人男性の3人が誘拐容疑で逮捕される。
その後の調べで女子高生は「今の生活がイヤだった」と供述。
病院を出た後に姉へ連絡し迎えに来てもらったことが判明した。
ネットでは、
「姉を頼っただけなのに逮捕されるの?」
「実名報道っておかしい!」
「知人の男性は連絡しただけなのに可哀想じゃあないか」との声が上がっています。
しかし、その理由を明確に説明している人はいません。
事件に至る背景
まず、今回の事件が世間の関心を集めた理由は、「公開捜査」になったことです。行方不明の女子高生の顔写真を全国に公開したため、多くの人が心配したに違いありません。
では、なぜ奈良県警は公開捜査に踏み切ったのでしょうか?
昨日書いたブログにも書きましたが、行方不明届は平成30年だけで8万7962人います。行方不明者の 捜索願は、数多く出てきます。しかし、警察には、すべての人の捜索をする余裕が残念ながらありえません。
実際に捜索に乗り出すのは、「特異行方不明者」に分類された人だけなのが実態なのです。
この特異行方不明者とは、12歳以下の小学生などの子供や、認知症高齢者など、「行方不明になって、別の場所で一人で生活していくことが困難」と、判断される人のことです。
今回のケースが子供でないにも関わらず、写真まで公開する大規模な捜査になったのは、誘拐など、事件性が強く、少しでも油断すると行方不明者の命に危険が迫ると判断された場合に該当したためです。
なぜ、事件性が強いと判断されたのか?それは、家族からの通報と届け出内容から、未成年者誘拐の疑いが強いという確証を得ていたせいではないでしょうか?
結果的に、女子高生は姉のところにいたわけで、これは「家出人」と呼ぶべき内容です。
「無事に保護されて本当に良かった」というのは世間の反応ですが、奈良県警はそれでは済まされないのです。
彼らは、「単なる家出人を公開捜査してしまった」、という仲間内の警察官からの批判を浴びるからです。
奈良県警はメンツを潰されたのですから、その怒り心頭は計り知れません。

通常、逮捕することは、よほどの事件性がある場合
警察が通常逮捕するためには裁判所からの逮捕状を取り付ける必要があります。そして日本の裁判所は98%有罪にする稀有な存在です。つまり、よほど逮捕容疑に自信がないと裁判所に逮捕状を請求しないし、裁判所も認めないのです。
今回の事件では、県警はメンツをかけて逮捕に踏み切ったので、逮捕3日後の日曜日に地方裁判所に送検されることになります。この時、警察署を出発する時に各テレビ局が容疑者を撮影することになります。よくテレビニュースに出てくる送致用の車に乗り込む時の映像です。
単なる家出人を行方不明者として公開捜査に導いた当事者の家族と容疑者らを世間にさらすことで、模倣犯を阻止し、メンツを取り繕う考えなのではないでしょうか?
事件が与える響は?
この女子高生は「家出人」でしょうから、容疑者らがお金でも要求していない限り、逮捕容疑は「不起訴処分」に相当すると考えられます。ただし、留置されている期間は、3日では済まされずに、10日、もしくは最長の20日間、反省させるために拘留するかもしれません。
今後の影響ですが、今回のケースで全国の警察は行方不明者の捜査に慎重にならざるを得ません。家出人との違いをどう確信するのか、事件性の判断が強く問われることになるためです。
届け出を出す一般の方にも、もしも公開捜査を願うなら家出人ではないという強い確証と意思が求められます。
「ひょっとしたら事件に巻き込まれたのでは?」との心配とともに、「ただの家出だったら、家出先の人が誘拐で逮捕されてしまう」とまで考えて、本来事件だったケースの通報が遅れてしまっては本末転倒です。
これからも増え続けるであろう、行方不明捜査に、奈良のケースが影響を与えるのは間違いありません。
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